成年後見制度は、まだあまり耳慣れない言葉かもしれません。あなたが認知症などで、自分の意思を表明できなくなったとき、自分に代わって財産の管理などを行うための制度です。
遺言と結びつけて活用すると、自分の生活の質を最後まで守ることができます。「老いじたく」の大切なツールの一つです。
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成年後見制度を支える考え方は、次の3点です。
- ノーマライゼーション
障がいや病気等があっても、障がいのない人と同じような生活の質を維持していこうという考え方です。
- 自己決定の尊重
本人の自己決定を尊重し、残された能力を活用することで将来に備えようという考え方です。
- 身上配慮義務
本人の状況を把握し、医療・介護・福祉はどう受けるか、財産はどう使うかを考え、その人の生活を後見人が配慮する義務があるという考え方です。
成年後見制度は、判断力が不十分なため、財産侵害を受け、人間としての尊厳が損なわれることがないようにする仕組みです。身体の障がいがあっても、それだけでは制度の活用は難しいです。
- 加齢による脳の老化(認知症等)
- 生まれながら脳に何らかの障がいがある、子どもの頃の病気等で脳に何らかの障がいを受けた場合(知的障害)
- 脳梗塞、交通事故、手術等で脳に損傷を受けた場合(高次脳機能障害)
- 社会的ストレス等から精神が不安定になった場合(統合失調症等)
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成年後見制度の種類
制度には、判断力が不十分になる間に利用を開始する「任意後見制度」と、判断力が不十分になってから利用を開始する「法定後見制度」の2つがあります。
任意後見制度は、将来、判断能力が不十分になった状態になったときの不安に備える仕組みです。弊所は、お子様の見えない夫婦や一人で暮らしておられる方にこの任意後見契約をおすすめしています。ご自身や家族の財産を守る力となります。
- 見守り契約
定期的に本人と連絡を取り、本人からの相談にのるいわば「自分のための法律家」を雇う契約です。何かあれば、すぐに相談ができるのが利点です。
- 財産管理等委任契約
判断力が十分で、元気なうちから使えます。体が不自由で、銀行まで行くのが大変だ、お金の管理に自身が亡くなってきたという場合に使えます。
お願いすること(委任すること)をあらかじめ決め、財産の管理などを自分の代わりに委任者に行ってもらいます。
財産(通帳など)のチェックは自分で行います。
- 任意後見契約
元気で判断力があるうちに、先のことを考え、判断力が衰えたときに備える契約です。
今のうちに何を任意後見人にお願いするか(代理権を与えるか)を決め、判断力が衰えたときに、契約の内容が実行されるものです。
任意後見人は、誰でもなれます。
契約は、公証役場で、公正証書を作成して結びます。
任意後見人を家庭裁判所が選ぶ任意後見監督人がチェックする仕組みがあります。
*お子様のおられないご夫婦、お一人の方はこの制度を活用して「終活」を考える必要があります。
*遺言や死後事務委任契約と合わせて利用すると、死後のことまで責任を持って決めておけます。
- 死後事務委任契約
後見契約とは趣が違いますが、この契約は、自分の死後の事務(葬儀及びその後の諸事務)を事前にお願いするものです。
お一人でお住まいの方は、自分の死後のいわば「後片付け」をお願いすることになり、安心です。
任意後見契約(自分が死ぬまでの財産管理)などと一緒に契約すると、「終活」としては大変有効です。
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法定後見制度は、判断能力が不十分になった状態になった方のための仕組みです。程度によって「成年後見人」「保佐人」「補助人」をつけてもらえます。
家庭裁判所に申し立てる必要があります。
どの類型に当たるかは、医師の診断を元に決められます。類型によって権限が違います。
- 成年後見人
判断能力が欠けているのが通常の状態である方が利用できる型です。
成年後見人は、原則全ての法律行為を本人に代わって行います。
- 保佐人
判断能力が著しく不十分な方を支援する類型です。
保佐人は、民法13条第1項に定める事項(大きな額の財産の管理や訴訟など)について同意権や取消権を有します。
- 補助人
判断能力が不十分な方を支援する類型です。
本人と話し合って、納得して利用します。
知的障がいのある子どもを持つ親さんは、「親なき後問題」の解決のためにも、成年後見制度の検討をしてはいかがでしょうか。
遺言と信託の活用では、身上配慮の側面が欠けますが、成年後見制度では、身上配慮と財産管理の両側面をサポートできます。
遺産分割協議をする段階で認知症等により判断能力がない(不十分)場合、この制度を利用することになります。ただし、協議のみでの利用ができませんので、注意が必要です。
相続・遺言、成年後見制度等に関するお問い合わせ先
TEL&FAX. 058-247-0255
e-mail. info@sg-office.biz
佐竹行政書士事務所 佐竹和浩